君と同盟



 悲鳴と銃声。朧になっていく意識の最後に聞いたのはこの二つ。血相を変える見知った面々のひどいツラが最後に見たものだった。疲労の中で泥のように重く沈んでいくのを意外と心地よいと思ったものだった。そうして、急に真っ暗な安寧に呑まれて一切の感覚が途絶えた。  それからどれだけの時間が経ったかわからない。俄かに色が戻ってきたラファエロの視界に映ったのはなにか緑色の影だった。
 なんだと思っている内に、ただの色のかたまりだったものがだんだんと輪郭を露わにし、視覚以外の感覚も戻ってきた。熱い。もどかしい。何かおかしい。
 鈍る意識を払って見ると、数年前に喧嘩別れした兄弟が下半身で蹲っていた。理解できない。

「っおい!」

 慌てて身を起こそうとして脇腹に激痛が走った。声もなくラファエロは再びベッドに倒れ込んだ。

「撃たれたんだぞ、暴れるなよ」

 ラファエロの陰茎を握ったままレオナルドは言った。
 撃たれたことは覚えていた。痛む腹もあり、それは納得できる。だが、それ以外が解せない。撃たれてからどうなって、ここはどこで、一体何をしているのか。眼球だけを動かしてとにかく状況の把握をはかろうとした。

「ここは俺の住処だ。一番近かったからな」
「それでテメーは一体何してんだ」
「何って……」

 見てわからないのか、といった顔をしてレオナルドはラファエロ自身を握っていた手を擦り上げた。

「う、あ……あっ……?」

 ぞくぞくと快楽が甲羅の中を抜けて脳天まで響いた。たかが手で擦られただけでこの気持ち良さはどうしたことか。若い時分でもこれほどの感度はなかったはずだ。鈴口からはもはや精といってもよい濃度の先走りが溢れていた。

「麻酔に使った薬が驚くほど粗悪だったみたいでな。ずっと勃ちっぱなしだったんだ。そのまま放っておくのも忍びないと思って処理してやってるんだ」
「んなこと誰が頼んだよ!」

 ラファエロは吼えかかったが、身体は思うように動かない。その上、感度の上がった身体を弄ばれているものだから、抵抗など出来たものではなかった。

「くそっ……!」

 もはやどうにでもなれという気分だった。勝手にいじくり回され、《処理してやる》などと恩着せがましく言われるのは腹が立つが、快楽の前にすべて霞みかけていた。
 一物を中心に身体中が熱を持っていた。溜まりに溜まったその熱を早く解放したくてたまらない。しかし、レオナルドの手淫はあまりにも緩慢だった。腹の痛みを堪えて腰を揺らめかせるとだんだんと思うような性感が得られるようになった。夢中になって自身をレオナルドの手のひらに擦りつけていると、不意に陰茎が一層膨らんだ。目の前が眩むような絶頂。それを期待した瞬間、すっとレオナルドの手が離れていった。

「あ……?」

 肩すかしを食らって呆然とするラファエロ。その隙にレオナルドはどこからか取り出した細い麻縄でラファエロの陰茎の根元を縛った。さぁっとラファエロの顔から血の気が失せた。

「何しやがるっ! バカか、解きやがれ!」
「この状態じゃあ到底一回ではすまないだろ。何度もイくと辛いだろうと思ってな。傷にも障る」

 すうっとレオナルドの指先がラファエロの血管の浮き出た陰茎をなぞった。そんな些細な刺激にも腰が跳ねそうになった。
 悶えて蠢くラファエロを感じとって、レオナルドの口角が吊りあがる。丸いサングラスの奥の目は見えないが、弓月のような弧を描いているに違いなかった。

「イけないのも辛いと思うが、イイ目は見せてやるぞ。薬が抜けるまでな」

 ラファエロの顔の両脇に手をついて、レオナルドが覆いかぶさってきた。一物に圧迫感を感じて下半身を見やると、傷だらけの緑色の腿に挟まれて、自身の赤黒く充血した頭が覗いていた。
 にちゅ、と濡れた音が耳を打った。レオナルドは器用にラファエロのものを内股に挟みこんで扱き始めた。
 引き締まった筋肉に絞られ、幾度も達しそうになるが、その度に達することのできない苦しみを味わう羽目になった。

「……い、い加減……解けっ……」
「まだだめだ」

 喜色を言葉に滲ませながら、レオナルドは甲の下で膨らんだ自身を解放した。勢い、それは太腿から覗いたラファエロの一物の先を弾いた。

「はっ、あ!」

 また違った刺激にラファエロは煩悶する。レオナルドが動く度、腿とそれ以上に熱を持ったレオナルドの陰茎に擦れて、もはやラファエロの思考は千々に乱れて与えられる快感に塗りつぶされるがままだった。
 再び霞み始めた視界に息を乱し始めたレオナルドがいた。まるで本当に犯しているようで一層動悸が激しくなったが、すぐに反動で屈辱と渇きが押し寄せてきた。この高ぶった状態でレオナルドに突っ込んだらどれほどの快楽が得られるのか、考えただけでも震えがきた。
 入れたくて入れたくてたまらない。なのにそれすら許されない今の状況。突っこんで掻き混ぜて内に精を放って思う様犯してやりたかった。

「クソッ……クソッ!」

 『入れたい』、『入れさせろ』、喉まで出かかった言葉を、拳を握って堪えた。過ぎる快楽とジレンマに涙が滲み始めていた。

「入れたいか?」

 胸の内を見透かされてラファエロはぎくりと身を固くした。

「それともイきたいか?」

どちらか選べ、と言う穏やかなレオナルドの声が、悪魔の囁きのように聞こえた。見上げたレオナルドの顔には未だかつてないほどのいい笑みが張りついていた。



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