Harem
汗をすったシーツがじっとりと纏わりつく。
右に左に身体を向けて落ち着く場所を探してみたけれど
どんな姿勢をとっても眠りは落ちて来そうにない。
この間不意打ちで仕掛けたキスを思い出しては更に上がる体温にいらいらする。
消えろと叫んでも陽炎のように揺らいでちらつく。
めらめらと燃える炎が足を舐め、腹を舐め、じりじりと追い詰める。
干上がった者は水を求めずにはいられない。
それが許されないことだとしても。
踏み入れたが最後、戻っては来れぬところへと追い立てられる。
気づくとベッドを抜けて扉の前に立っていた。
どうしてこんなところにいる?
そこから先には行ってはいけない。
―――こちらへおいで。
畜生、幻聴まで聞こえる始末。
―――こちらへおいで。
なにも聞こえるもんか。
ふいに堅く閉ざされた扉が自らぎいと開く。
「ラフ、どうした?入って来いよ」
そんな顔で笑いかけられたら止められないと分かってやっているのか。
抱きついた身体はひんやりとして心地よい。
濡れた瞳、俺を呼ぶ声、しなやかな四肢。
これが全部俺のものになるのなら二度と戻れなくてもいいじゃないか。
後ろでハレムの扉が閉まる。